いつの間にか冷めていく普通の親子関係
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親子関係は壊れやすい人間関係の一つである。
もはや他人のような関係になってしまった親子も珍しくない。
親子は距離が近い分、関係も危ういのだ。
子供は心の質量が小さい。対して大人は大きい。
よって子供が小さいうちは、子供が親に勝つことはない。
しかし子供が成長するにつれ、質量は大きくなる。
やがて親の質量を上回るときがくる。そうなったとき、
親から離れたい子供は早々に親と距離をおく。
親からすると、子供が親である自分に従っている理由が、
自分のことが好きだからか、それとも心が小さいからか分からない。
明らかな態度を取られて初めて分かるのである。
そして分かった時点では関係の悪化は深刻化しているものである。
まさか今までこんなにも愛情を注いで育ててきた息子・娘が、
自分のことを嫌いになるなど予想だにしないのだ。
多少は馬鹿にするようなことも言ってきたことを自覚しつつも、
まさかそんなものが積もり積もって関係が壊れるなどとは、
思いもしないのである。
しかし親にとっては小さなことでも、子供からすれば大きなことである。
子供は心の質量mが小さいため、大人が少しの力Fを加えるだけで、
子供の心はすぐに変化aする。というよりも変化せざるを得ない。
つまり、親が子供に力Fをかけたとき、
親の心の質量Mが子供の心の質量mのN倍であるとすれば、
親は反作用としてF/Mの変化を心に生じ、子供に至っては、
そのN倍のF/mの変化を心に生じさせられることになる。
親が受ける反作用も子供が受ける作用も、大きさは同じであるが、
親と子では心の質量に差があるため、加速度は異なるということである。
力が等しいゆえ、加速度は質量の比の逆数に比例するのだ。そして
この変化が保存されたまま子供は成長し、質量が増していくのである。
よって、子供の心の質量が、親の心の質量と等しくなるまで成長した際、
子供から親にリターンされる力の大きさは、当時の力のN倍となる。
さらに成長し、もし親の質量の1.5倍になれば、リターンも1.5倍となる。
親の想像以上に、子供から親に還ってくる力は大きいものになるのだ。
このように親子関係では、良くも悪くも大きく還ってくる特徴がある。
もし親が子供に、与えて与えて与え続けてきたならば、
子供から親へ恩返しという形で与え返される。しかし逆に、
親が子供から、奪って奪って奪い続けてきたとなれば、
子供が親からそれだけのものを奪い返していくことになる。
これは「与えて与えられる」「奪って奪われる」の原則である。
この原則を力学で説明すると、与えられた力のベクトルが
望みの方向と一致していれば「与えられた」ことになり、
ベクトルが一致していなければ「奪われた」ことになる。
与えたか奪ったかは、相手が望んでいる方向によって決まるのである。
こちらは「見たいように見る」の原則である。
そして、親子関係の場合は、親子で心の質量の差が顕著であり、
通常の「与えて与えられる」「奪って奪われる」より
格段に高いレートでリターンされるのである。
決して、「自分がした分」が還ってくるわけではない。
「相手がされた分」が還ってくるのだ。
この点は注意が必要である。