「愛」と「万有引力」



  • この宇宙では、質点間で「万有引力」が働いている。
    木からリンゴが落ちるのも、月が地球の周りを回るのも万有引力である。
    そして人の心にも同様に万有引力が働いており、心と心は引き合うのだ。
    この心と心に働く万有引力が「愛」に相当する。


    万有引力Fの強さは質点同士の質量の積m1×m2に比例する。
    つまり、質量mが小さいもの同士では弱く働き、
    質量mが大きいもの同士では強く働く。愛もこれと同様である。
    心の質量mの大きい人ほど人に与える人で、人から愛されるのだ。
    裏を返せば、魅力的でない人は、誰からも愛されないということである。

    そして愛とは、純粋に相手に与える力Fであり、性別のような極性は影響
    しない。極性の影響を受けるのは恋であり、愛は性別とは無関係なのだ。
    つまり愛とは、「相手の性別が自分のそれと異なっていなければ
    発動することもできない優しさ」
    などとは違い、誰にでも優しくできる
    ものなのだ。ただし、距離dが近いものほど強く働く性質がある。

    例えば、テレビで貧困に苦しむ子供が映っていれば、
    漠然と「かわいそうだ」と感じるのではないだろうか。これは愛である。
    しかし、横で一緒にテレビを見ていた子供が咳をしたらどうだろうか?

    おそらく、テレビの中の貧困に苦しむ子供より、
    自分の子供の咳の方が気になる
    のではないだろうか?
    「貧困」と「咳」では重みがまるで違うが、自分に近いものほど
    愛おしく思うもの。愛は距離で人を差別する性質があるのだ。

    つまりある程度近づいていないと、相手から愛されないのである。
    だからといって相手に近づこうとしても、質量mの大小に関係なく
    相手に近づく速度vは同じであり、それなりに時間tがかかるのだ。

    速度vは加速され続けた時間tに比例するので、
    相手と早く仲良くなりたいなら、それだけ早くアプローチするしかない。
    実力も必要かもしれないが、人間関係の構築には時間もかかるのだ。
    婚活は早いに越したことないかもしれない。

    因みに、「愛」が万有引力なら、「恋」は磁力のようなものである。
    「磁力」とは、磁性体間で働く力である。磁極(N極・S極)が、
    同じであれば斥力となり、異なっていれば引力となる。

    「恋」も同様に、相手の性別の影響を受ける。
    相手と同性であれば斥力が発生し、異性であれば引力が発生する。
    中には反粒子のような特性が反転したパターンもあるかもしれない。

    つまり、「愛」と「恋」の違いは、
    「愛」が距離と質量の影響を受けることに対して、
    「恋」は距離と極性の影響を受けるという点にある。


    「愛だと信じて疑わなかった感情が、所詮は薄汚い性欲だった」
    と気づかされるときがくるわけだ。あのとき美しいと感じた要素
    がすべて燃え尽き、今となっては灰となってこの身に降り注ぐ。