心を力学する
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力学(古典力学)では、世界を物理的な空間として定義し、
その中に内在する物体の運動の様子を数式で説明する。
同様に、人の心を精神的な空間として定義し、
心の状態の変化を数式で説明する。
そもそも力学とは、物体の運動の様子を説明するための体系である。
そして、物体の運動の様子は力が与えられることで変化する。
この力を知ることで物体の運動を予想するのだ。
ここで、力学にはいろいろと種類があるが、多くの人が中学校や高校で
学んだ一般的な力学は「古典力学」と呼ばれている。
古典(=古い)ということは、「誤っている」ということである。
実験の精度が上がり、古典力学は正しくないことが証明されたのだ。
つまり、学校で学んだ力学は間違った知識だったということである。
そう聞くと、
「学校の勉強って役に立たない無駄なことだったのか?」
と思うかもしれない。そんなことはない。
確かに厳密には真実ではないが、簡単に近似解を得られるのだ。
仮に誤差があったとしても、あまりにも小さいため無視できる。
無視できないのは、宇宙のようなスケールで考えるときの話である。
その場合は相対性理論を利用し、より複雑な計算を行う必要がある。
だが、一般的な物理現象を説明する際は、古典力学で十分である。
補足として、ニュートンとアインシュタインの違いは、
時空間が変化する(=相対的)か変化しない(=絶対的)かである。
この違いによって例えば、
時速100kmで走行する電車の中で、同じ方向に時速20kmで走ったとき、
ニュートンは時速120kmと答えるが、
アインシュタインは時速119.999...kmと答える。
どう考えてもニュートンの方が正しいように思えるが、
実際に正しかったのはアインシュタインだったのだ。
このような(古典)力学を人の心に適用する。まず、物理的な場には
時間と空間があり、物体が存在する。そして物体には質量がある。
物体は空間内を移動し、力をやり取りして運動の様子を変える。
同様に心にも時間と空間がある。そして知識という
質量らしきものもある。自分を質点(もしくはその集合体)と見たとき、
心は力をやり取りし、運動の様子を変えているように見える。
このとき、力の大きさに比例して変化の度合いも大きくなる。
以上を踏まえ、基本的な量を以下のように定義する。
時間: 心の状態の変化の間隔
距離: 心の状態の変化の程度
速度: 距離を時間で微分したもの
加速度: 速度を時間で微分したもの
質量: 知識の量
力: 心に変化を与える要因
運動量: 力を時間で積分したもの
エネルギー: 力を距離で積分したもの
※知恵や経験などをまとめて「知識」と表現する。
以上のような形で大雑把に定義する。観測が難しい以上、
細かな定義はしない。各要素の関係を論じるだけに留める。
そうして、心の状態の変化を力学で説明する。