「天国」という空間について



  • 古来より語り継がれてきた「天国」について、「あの世」とかではなく、
    より現実的に、それがどのような世界なのか紐解いていく。これまで、
    悪人では天国には行けないのだと、その性質が言い伝えられてきた。
    ここでは、それが正しいかどうかという見方はせず、「おそらく、当時、
    天国を説いた人たちは、こういうことを言いたかったのではないか」と
    予想し、本当に伝えたかったことは何だったのかという見方で説明する。



    「天国」とは、その空間におけるコミュニケーションのしやすさの程度
    であり、軸であり、コミュニケーションのコストパフォーマンスを指す。

    ※あの世という意味ではない。

    コストパフォーマンスが高いと、高価なオブジェクトでやり取りでき、
    かつ、コミュニケーションに掛かるコストも低く抑えることができる。
    つまり、空間が天国であればあるほど、コミュニケーションしやすくなる
    ということである。

    ※オブジェクトとは、この場合「テキスト」や「イメージ」などを指す。
    例えば、「テキスト < イメージ < ムービ」の順で高価になる。

    さきほどの「天国」であるが、温度のようなものと考えると
    理解しやすい。温度が高ければその空間は熱く、逆に低いと寒い。
    同様に、その空間が天国であればコミュニケーションしやすく、
    逆に天国でなければ、何かを伝えるために多くのコストを必要とする。

    つまり「天国」とは、伝わりやすい空間を意味するのである。伝わり
    やすいということは、共有され評価されるのも速いということである。
    よって「与えて与えられる」「奪って奪われる」の循環も速いのだ。
    となれば、人から奪おうとする人は、天国では生きていけないのだ。
    なぜなら、すぐにバレて、たちまち人から奪われていくためである。
    ※「天国」という単語は、軸もしくは空間を指す言葉として用いる。

    そもそも犯罪は、バレないことを想定している。なぜなら、犯行が
    バレたときは、それ相応の罰を受けなければならず、罪を犯して得を
    するためには、この罰を回避しなければならないためである。
    このことは数式で考えれば分かりやすい。バレやすさをpとすると、
       犯罪の期待値 = 奪った分×(1-p) + 罰×p
    と表すことができる。pが低ければ、すなわちバレにくければ
    犯罪の期待値は高くなり、逆にバレやすければ期待値は低くなる。
    もし空間が天国であれば、このバレやすさpは100%に近づくため、
    天国であればあるほど、犯罪の期待値も下がっていく
    のである。

    よって、犯罪者は、天国を避け、犯罪の期待値の高い領域を求めて
    移動する。そうした場所には、他にも同じように考えた人が集まってくる
    わけであり、したがって、人から奪おうとする人の比率が高くなる。
    つまり、奪われるリスクが高くなる。となると、あまりガラの悪い領域に
    行き過ぎると、むしろ自分が奪われてしまうのである。

    まとめると、犯罪の期待値が高くなると奪われるリスクも高くなり、
    犯罪の期待値が低くなると奪われるリスクも低くなる
    のだ。以上を
    踏まえ、人は、自分が最も楽して得できそうな領域へ移動するのである。
    そしてこれは、私もあなたも、誰もがやっていることである。というと、
    「いやいや、私は何も奪おうとはしていない!」と思うかもしれない。

    本当にそうだろうか?
    最初に説明したように、空間が天国であればあるほど、
    コミュニケーションのコストパフォーマンスは高くなる。
    もし、他人と思考レベルで繋がるようになったとしても、
    「私は何も奪わないでいられる」と自信を持って言えるだろうか?

    少しでも相手から奪う思考をした瞬間に、相手にもそれが伝わり、
    ゆえに相手から奪うことになるのだ。相手に何でも伝わる世界では、
    常に自分の心の反応を制御しなければならないのである。
    これに耐えられないからこそ、人はあえて天国を離れて、
    自分が最も安定できる領域で落ち着こうとする
    のである。

    それでも人は常に成長しているわけであり、そして成長に伴い、
    「奪うこと」よりも「与えること」を考えるようになるのだ。
    よって徐々に心をオープンでき、その度合いに応じて、
    より天国な空間に耐えられるようになる
    のである。となれば、当然、
    より天国な空間に移動するだけである。

    こういう意味では、天国とは成長に応じて進むことのできる世界であり、
    進むべき方向である。ゆえに、天国は上で地獄は下という印象が強い。
    つまり、今いる場所がどれだけ天国であるか、すなわち、今どれだけの
    天国に耐えられるかは、まさにこれまでの成長の積み重ねの結果なのだ。
    根気強く心を磨いていかなければならない。天国に王道はないのである。